トランスジェンダーを生きる:語り合いから描く体験の「質感」
本書は、トランスジェンダーを生きる体験をめぐる「質感」―言葉になる前の身体感覚や実感―について探究したものである。
理論編第1章では、トランスジェンダーにまつわる用語を整理したのちに、その歴史を概観し、現代における医療・社会制度の問題点を指摘した。第2章で古典的文献から性を捉え直すための示唆を導出した上で、第3章にて近年の調査研究について批判的に検討した。その上で、次に示す三つの問いを提示した。①性を他者とのあいだで立ち上がるものとして捉えることによって、どのような事態が把捉されるのかを検討すること、②トランスジェンダーを生きるという体験に伴われる実感とその背後にある構造を明らかにすること、③トランスジェンダーが他者や社会に開かれながら生きていくために必要なことについて検討することである。第4章では、そのような研究目的に適した方法論について議論し、数ある質的アプローチの中でも、語り合い法と対話的な自己エスノグラフィが本研究の問題意識に適合することを論じた。
事例編では、先の三つの問いに答えるべく、実際の事例を分析した。第5章では、性ないし性別違和を他者との関係性の中で捉え直すことを試みた。その試論により、性を個人の内部に閉じた固定的なものではなく、他者から感受されるような〈雰囲気〉として把捉する必要性を明らかにした。第6章では、実際のトランスジェンダーを生きる体験に伴われる実感の諸相について描いた。そして、その感覚の根底には、社会に用意された性役割に、自らをはめ込むように生活をせねばならないという構造があることを明らかにし、それを〈擬態〉と名付けた。第7章では、「トランスジェンダー」といった言語的概念や、自然体の自分を受け止めてくれる他者の存在が、トランスジェンダーにとっては未分化な感覚の収めどころを与えてくれることを示し、それらを〈器〉と呼んだ。第8章の最終考察では、従来の研究知見との相違について議論した上で、トランスジェンダーが自然体でいる際に醸し出される〈雰囲気〉が、具体的他者から受け止められることが重要であると結論付けた。
理論編第1章では、トランスジェンダーにまつわる用語を整理したのちに、その歴史を概観し、現代における医療・社会制度の問題点を指摘した。第2章で古典的文献から性を捉え直すための示唆を導出した上で、第3章にて近年の調査研究について批判的に検討した。その上で、次に示す三つの問いを提示した。①性を他者とのあいだで立ち上がるものとして捉えることによって、どのような事態が把捉されるのかを検討すること、②トランスジェンダーを生きるという体験に伴われる実感とその背後にある構造を明らかにすること、③トランスジェンダーが他者や社会に開かれながら生きていくために必要なことについて検討することである。第4章では、そのような研究目的に適した方法論について議論し、数ある質的アプローチの中でも、語り合い法と対話的な自己エスノグラフィが本研究の問題意識に適合することを論じた。
事例編では、先の三つの問いに答えるべく、実際の事例を分析した。第5章では、性ないし性別違和を他者との関係性の中で捉え直すことを試みた。その試論により、性を個人の内部に閉じた固定的なものではなく、他者から感受されるような〈雰囲気〉として把捉する必要性を明らかにした。第6章では、実際のトランスジェンダーを生きる体験に伴われる実感の諸相について描いた。そして、その感覚の根底には、社会に用意された性役割に、自らをはめ込むように生活をせねばならないという構造があることを明らかにし、それを〈擬態〉と名付けた。第7章では、「トランスジェンダー」といった言語的概念や、自然体の自分を受け止めてくれる他者の存在が、トランスジェンダーにとっては未分化な感覚の収めどころを与えてくれることを示し、それらを〈器〉と呼んだ。第8章の最終考察では、従来の研究知見との相違について議論した上で、トランスジェンダーが自然体でいる際に醸し出される〈雰囲気〉が、具体的他者から受け止められることが重要であると結論付けた。
出版社
ミネルヴァ書房
ISBN
978-4623094066
出版年
1 Jan 2022 – 30 Nov 2022
専門
社会科学
テーマ
社会
人権
性別とアイデンティティ
地域
日本